日本の食文化は長い歴史によって独特の哲学ができました。その哲学によって発達した食事は健康のために理想の献立とも言われています。
とくに「元禄時代以前の献立」は理想的な食事とされています。これは1970年代にアメリカの議員が調べてわかったことです。
じゃあ、その元禄時代以前の献立はどんなものだったのか?そんな食事がどのように体に影響するのかなど、日本の食事の歴史について紹介です。
一汁一菜を献立にいれてみませんか?
一汁一菜とは何か
一汁一菜とは、文字通り、一つの汁物と一つのおかずの献立です。
米を主食とし、それに味噌汁などの汁物と一品のおかずをそえた食事のスタイルを指します。
元禄時代より前は、この一汁一菜が庶民や武士の食事だったようで、一汁三菜は大名などの食事だったようです。
でもって、昔の日本人は貧乏で食事もままならず、お侍さんに搾取されていたと誤解されています。これはどうやら後々つくられたデマのようです。
実際、昔の日本人の生活を調べたら、お米以外にも色々なモノをつくって、それを売り買いすることで、農民でもそれなりに豊かな生活をしていたという調査結果もあります。
栄養バランスがよい
一汁一菜の特徴は、その簡素さにあります。ですが、栄養バランスが悪いわけではありません。むしろ、少ない品数で栄養バランスがよく、季節の食材を活かし、質の高い食事を実現しています。
これらの組み合わせは、日本人にとって大事な栄養素をムダなくとれます。
さらに、煮る、焼く、蒸す、和えるといった調理法は、食材の持ち味を最大限に引き出し、健康だけではないのが日本の伝統的な食事です。
いまの食事の常識からすれば、こんなんで栄養バランスが良いなんてウソでしょ。そう思いがちですが、そんな現代人にくらべ、昔の日本人はバチボコに体力があったとされています。
よく知られている逸話として、質素な食事なのに日本人の体力がバチボコにあることがわかり、
肉とか食べさせたら、もっと強くなるんじゃね?
とドイツの医者が思いつき肉を食べさせました。逆に体力がなくなり、
もうカンベン。前の食事にもどしてほしいでござる
と日本人が言ったとされる逸話もあります。
続けるとわかるのですが、玄米を中心にした質素な食事のほうが体力はあがります。
「足るを知る」を知る
一汁一菜は、食事を通じて「足るを知る」ことを知ることができます。
足るを知るとは、ものを求めすぎず、シンプルな中に満足を見出すことです。
現代は大量生産、過剰消費によって社会が成り立っています。でも、そこに生きる我々は、ホントにしあわせでしょうか?
足るを知ることは、ホントのしあわせに近づく方法の一つなのかもです。
日本の食文化
日本食は日本人の食にたいする価値観や美意識が集約されていて、日本の食文化全体に大きな影響を与えています。日本の食文化の特徴とは、
季節感と自然との調和
日本の食文化において、季節感は非常に重要な要素です。一汁一菜の考え方は、この季節感を最大限に活かすことを可能にします。
少ない品数だからこそ、その時期に最も旬な食材を選び、その味わいを存分に楽しむことができるのです。春の若竹汁、夏の冷や奴、秋の松茸ご飯、冬のかぶら蒸しなど、一汁一菜の中に四季の移ろいを感じられます。
また、自然との調和も一汁一菜の重要な側面です。地域の特産品や旬の食材を活用することで、その土地の自然環境と密接に結びついた食事を楽しむことができます。これは、日本人の自然観や環境意識とも深く関連しています。
美的価値観の体現
一汁一菜は日本の美的価値観を、食で表現したものとも言えます。
「引き算の美学」とも呼ばれる日本の美意識は、余分なものを削ぎ落とし、本質的なものだけを残すことで真の美を追求します。
また、盛りつけにも日本の美意識が表れています。
器の選び方、食材の配置、色彩のバランスなど、細部にわたって美的な配慮がなされています。これは、食事を単なる栄養摂取の手段としてではなく、五感で楽しむ芸術としてとらえる日本の食文化の特徴をしめしています。
「わび・さび」の美学
日本文化にはわび・さびがあるとされています。これは華美な装飾をせず、シンプルさの中に美を見いだすという美学です。これは、日本文化の根幹をなす美意識の一つです。
わびは、質素でひかえめな美しさをあらわし、贅沢や華美さとは対極にあります。
一方、さびは時の経過による風合いや味わいを尊ぶ概念です。
この美意識は日本文化にいろんなカタチで反映されています。
- 茶道:簡素な茶室や道具の使用
- 建築:自然素材の活用と余白の美
- 庭園:自然の景観を模した設計
- 陶芸:不規則な形や釉薬の効果を活かした作品
わび・さびは、物事の本質や一瞬の美しさを大切にし、その個性が大事とされます。これは現代の生活で忘れつつある、シンプルさや自然との調和を見直すきっかけを与えてくれます。
バランスと節制
一汁一菜は、栄養のバランスを考慮しつつ、食べすぎをふせぐ役割もあります。現代の過剰消費社会では、無性に食欲をみたそうとします。
一汁一菜にするとわかるのですが、なんか変なモノはいっているんじゃない? と疑いたくなるほど、いわゆる普通の食事は食欲が刺激されます。
一汁一菜にかぎらず、日本食は食べすぎをおさえ、ほどほどで満たされるようにつくられています。
実際、日本に留学してきた外国の人が日本にきたら、おどろくほどやせたなんていう書きこみもあるほどです。日本人が忘れつつある食文化は、他国の人が逆に関心をもって、実践をしているようです。
戦後の食文化の変化
大東亜戦争後、日本の食文化は大きくかわりました。西洋の食文化がはいってきて、日本人の食生活は劇的に変化しました。
そのおかげで牛丼やオムライス、コロッケ、カレーなど、他国の料理が魔改造され、日本人だけじゃなく、多くの外国人の胃袋を満たしてはいます。
ですが、毎日がごちそうな献立は、日本人の心と体を弱らせてもいます。
小麦や乳製品の影響
小麦や乳製品、大量の油をつかった料理など、日本人の食生活にはなじみが薄かった食材が消費されるようになりました。
伝統的な食事のパターンがくずれ、それとともに腸内環境が悪化したようです。そのせいで、ならなくて良い病気にかかる人が増えてきました。
加工食品の影響
経済が成長するにつれ、便利で保存のきく加工食品もできました。調理時間は短縮されましたが食品添加物をとりすぎています。
いま日本で、ふつうとされる食事をすると年間で7kg以上の添加物を口にすると言われています。
添加物は用量を守ればいいとされていますが、組み合わせれば、どうなるかはわかりません。
新しい食生活にかわったことで、それまで日本人にはあまり見られなかった健康問題でてきました。これらは「食源病」とよばれ、生活習慣病の増加などが原因とされています。
日本人の2人に1人がなるとされる病気も、本来はならなくてもいい病気といわれています。
一汁一菜のような伝統的な日本の食事スタイルは、日常生活から姿を消していきました。
便利で物質的に満たされた生活をできるのは、たしかに楽しいもので、日本人だからこそできたコトでもあります。
ですが、そんな生活でなにを得たのでしょう?
それはホントにしあわせなのでしょうか?
「僕は」そう考えるというだけですが、物質的にみたされて、腹いっぱい食べる生活にしあわせを感じません。
そんな生活をかえるために一汁一菜を生活にとりいれることです。
一汁一菜は、昔はよかった。昔にもどろうという提案ではありません。
日本の食文化の本質を理解し、それを現代に活かすという提案です。
そうすることで日本人がもっている良さをとりもどし、心が満たされた健康な生活をおくることができると考えています。
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